適当刊・伴幸一郎の一本勝負

日刊でも、週刊でも、月刊でもありません。「適当刊」です。気が向いた時に書きます。

カルロス・ゴーンの衝撃

日産ゴーン会長逮捕、日本版「司法取引」2例目(読売新聞-gooニュース)
https://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20181119-567-OYT1T50083.html


東京地検特捜部は19日、自分の役員報酬を実際より50億円余り少なく有価証券報告書に記載したとして、日産自動車(本社・横浜市)会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)ら代表取締役2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。連動して日産自動車本社などを捜索した。

東京地検特捜部は今回、ゴーン容疑者らの有価証券報告書虚偽記載に深く関与したとされる日産関係者との間で、捜査に協力する代わりに刑事処分を軽くする協議・合意制度(通称・日本版「司法取引」)に合意したという。今年6月にスタートした同制度が適用されるのは、2例目だそうだ。


終業後に突然詰めかけた、マスメディアに「ゴーン会長が逮捕されましたが一言!」、「日産としてはどの様に?」と聞かれても一社員の彼らには、答え様がないのだからこれまた迷惑な話だろうと推察する。少なくともマスメディアのあなた達の方が状況を理解していると思ってならない。

とりあえず、これからの特捜部による捜査状況を見守るとしてカルロス・ゴーン氏について見てみようと思う。

1954年3月9日(私と1日違い)ブラジルのポルト・ヴェーリョで誕生し幼少期まで過ごす。その後両親の出身であるレバノンベイルート中等教育を受け、フランス・パリのパリ国立高等鉱業学校で工学博士を取得し卒業。フランスの大手タイヤメーカー「ミシュラン」に入社。3年目の27歳でフランスのル・ピュイ工場長に抜擢、その後も30歳で南米事業の最高執行責任者、35歳で北米事業部の社長兼最高経営責任者に就任。18年の在籍中、重要な役職を歴任した。

ミシュランでの業績(実績)を評価され、1996年、フランスの自動車メーカー「ルノー」に当時のルノー社長、ルイ・シュバイツァーに上席副社長としてスカウトされる。国営自動車会社から民営化したルノーにおいて、ベルギー・ビルボールド工場閉鎖をはじめとした不採算事業所の閉鎖、物品調達先の集約化等で経費の圧縮を進め、数年で赤字だったルノーの経営を黒字化させることに成功。ここから「コストカッター」・「コストキラー」の異名を拝する事となった。

1999年3月にルノーが経営危機に瀕していた日産自動車株36.8%を取得、資本提携を結んだ。6月にはルノー上席副社長職をそのままに、日産自動車最高執行責任者(COO)に就任する。その際の役員報酬が8億円と言われ批判の的となったのは記憶にあるだろう。まあ彼は「グローバルでは普通」等と一蹴したが。2000年6月には日産自動車取締役に、2001年6月には日産自動車最高経営責任者(CEO)に選出される。
また、2005年5月には、ルノーでも取締役会長兼CEO、ルノー・日産アライアンス(=連合)の会長兼CEOにも就任する。2016年にルノー・日産アライアンスに加わった三菱自動車工業代表取締役会長に就任。2017年には日産自動車西川現社長就任による、玉突き(?)人事で代表取締役会長となった。

現在64歳のゴーン氏。ここまでを見てるだけで、相当な経歴なのが窺える。
人物的にはレバノンとブラジル、フランスの多重国籍を有し、アラビア語とフランス語、英語、スペイン語ポルトガル語を話す事が出来る。日産社員に対して自ら日本語で演説をしたこともある。2004年には法政大学から、2005年には早稲田大学から名誉博士号を授与されている。日産を立て直した功績から、他社の社外取締役に招聘されたり、大学の委員なども務めている。
また、メディアにも積極的に登場し、漫画誌ビッグコミックスペリオールに「カルロス・ゴーン物語」が掲載されるなど、広く知られる存在となっている。

経営トップでありながら自分でハンドルを握る事を好む。日産やルノーに限らず他社の車を運転する事がある。運転に好意的な人物である事は周知の事実だろう。2002年の排ガス規制で生産終了したスカイラインGT-Rの後継車種「GT-R」「フェアレディZ」を復活させたのも、ゴーン氏自らゴーサインを出した。
私が個人的に意外と思っていたのが、「セドリック」や「グロリア」、「サニー」など日産自動車が伝統的に使っていた車名の廃止(ブランド名の変更)に最後まで反対していた事だ。コーン氏は「車名が体現する伝統の大事さ」を訴えていた様だが、プロダクトや販売部門の要望を飲んだ形となった。
しかし、モータースポーツについてはやや否定的なようで、日産のル・マン24時間耐久レースの完全撤退、F1に参戦しているルノーも参戦チームでは最も予算が少ないとされる(それでも100億は軽く超える)。
2009年金融危機による不況で、日産はコーン体制初の赤字転落をする。その際にグローバル人員2万人の削減と運動部の休止が発表されたが、就任1年目にの夏に都市対抗野球を視察。応援団と観客の盛り上がりに感じるものがあったのか直後に会見を開き、当時存廃問題が取り沙汰されていた日産野球部の存続を明言した。その際に「都市対抗野球こそが日本の企業文化の象徴である」とまで言ったのだから驚いたもんだ。


今回の「カルロス・ゴーン逮捕!」と言うセンセーショナルな見出しが踊った。認否は明らかにされていない様ではあるが、今後の過程で様々明らかになるだろう。それは東京地検のお仕事なので、報道等を見守りたい。現状まだ「容疑者」である。日本の司法には「疑わしきは罰せず」の原則がある。見ている側もそれを忘れてはならない。
余談にはなるが、保釈保証金は一体いくらになるのだろうか?1億、2億と言ったところで痛くも痒くもなさそうではあるが。

また、彼が何らかの形で経営の表舞台に登場るする日を待ちたいと思う。