適当刊・伴幸一郎の一本勝負

日刊でも、週刊でも、月刊でもありません。「適当刊」です。気が向いた時に書きます。

海外からの実習生  現場以外の話(後編)

おはようございます。昨日投稿しようと思っていた記事です。

技能実習に「宿泊業」追加=新在留資格の人材確保狙う(時事通信社-gooニュース)
https://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-181124X073.html

前編では、実習生と現場社員レベルの話(私の思い出話も含む)をしたが、今回は実習生を受け入れる企業側について掘り下げてみたい。

まず、外国人技能実習制度とは?
外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。(厚生労働省HPより)

この一文で内容理解できた人は一体何人いるのだろうか?少なくとも私は詳細資料を見ないと理解が出来なかった。
「実習生」と名前がついている以上、その目的は「実習」と言う事は容易にわかった。

ただ、その実際の運用はどうなっているのか?
正直に私が直接見聞きした事を話すと、『単価の安い労働力』とされているのが現状(だろう)。私が実習生と仕事をしたのはもう数年前の話で、運用する制度も微妙に変わってはいる。

内規か契約かは失念したが、時間外の労働は一切不可(実習なんだからそりゃそうだ)、確か最賃は払っていたと思われる。単純に比較はできないが、高校生のアルバイトが最賃よりも上乗せされた時給を貰っているのに、「外国人実習生」と言うだけで最賃となるのはおかしいだろうと担当部署には、再三言った記憶がある。
次に、通常個室として使っている寮の部屋を2人1部屋で使用している聞いた。6畳1間+ユニットバスに2人でどう住めと?

細かいところはまだあったが、この2点が大きな不満として私が感じていた事だ。
諸々納得がいかないのと妙な正義感に駆られて、その実態についてよくよく調べてみることにした。
結果から言うと賃金は最賃を数百円下回っていた。それじゃあ手取りが残る訳がない。社会保険関係も全く説明せず加入していた。次に寮の居室だが、「部屋が少ないので実習生には2人1部屋で使ってもらう決まり」だと言われたそうだ。
憶測だが、2018年の現在もこう考えている企業はあるだろうし、こう実行している企業もあるだろう。労働力不足の日本。日本で技能を学びたいとやってくる実習生。実際、安く使っている他社もあるし。と、悪循環の始まりである。


記憶に相違なければ寮費・その光熱費は受け入れ企業の負担とする規則らいし。ただ法を犯してまで、差別的な事を言ってまでする事かと腹が立ち、その足でそのまま本社へ向かった。担当所属長と話をしたが、全くもって話ならないので、担当役員を待ち伏せした。2月の北海道コートも着ずにでよくやったもんだ。2時間程待っただろうか。担当役員が出てきたので、所属と氏名を名乗り「実習生の待遇の件で5分下さい!」と啖呵を切った。
昔話だから正直に言おう。小便、チビるかと思った。吐きそうだし、もの凄く胃が痛かった。話が終わり車に乗った瞬間からしばらく記憶はない。

まともに話をするのは、実は初めてではあった。話の分かる人ではあった。翌日には動いてくれて、結果として憲法25条が保障する以上の賃金の支払いと寮の居室の個室化の確約、他従業員と同じ内容の福利厚生の実施を取り付けた。次年度から実習生の待遇は改善された。また実習生の受入時には、十分な説明の時間を掛ける事も確約させた。

ただしその一件により、私は敵にしていけない人を数人敵にした様だった。すぐに私自身の立場が急激に悪化した事は言うまでもない。世間には組織と派閥と言うものがある様だ。まあ、その縦組織を堂々と無視した上、一種のクーデターとも言われかねない事をしたのだから当然と言えば当然だ。それにどこの派閥にも属していなかった事も一因だろう。まあ派閥に属していたらこんな大それた事は出来なかっただろうけど。
待遇が改善された事を確認して、私は退職した。人によっては「クビ」と言う人もいたが、私のクビ如きでこれからの実習生の待遇が確約されるなら安いもんだと言った。
強いて言うなら辞めた事を後悔した唯一の職場かもしれない。この一件を契機に実習生だけでなく正社員からアルバイトまで全従業員の待遇が改善されたと聞く。まだ、地力は残っていたのだなと...。